17 おしゃぶき様
昔、医療施設の乏しかった頃、どこの村にも疫病に効くと言う地蔵菩薩などが祀られていました。 蔵敷の村山橋のたもと、青梅街道沿いに「おしゃぶき様」と呼ばれているお社(ご神体は分らない)があり、かぜや百日咳、口むき(ジフテリァ)に霊験があるとして、病気平癒を祈願する子供連れの主婦やお年寄り達の参詣が多かったといいます。
祈願して病気が治ると、お礼におしゃもじを供えます。願かけをする人はこのおしゃもじを借りてきて、これでご飯をすくって食べさせるとたちどころに病気が治るといいます。
すっかり良くなると、お礼に、借りたおしゃもじの他に新しいものとお賽銭を添えて供えます。
昔、くちなしで作ったふくべ(腰下げ)が下って居たのを見た人もいます。
九月には祭礼も行われ、露店が並び、十軒位の組合で寄付を集めて神楽を招き、テクレンテクレンと賑やかでしたが、もう五十数年やっていないそうです。
青梅街道が整備されたとき、お社は取りこわされ、街道の南側に現在のような小さなお宮になりました。
最近は、伝染病も少なく、お医者にかかるので参詣する人もいないのでは、と思いましたがまだ新しいものも含めて、五、六本のおしゃもじが供えてありました。
(『東大和のよもやまばなし』p37)